開催趣旨
フィールドワークは、文化人類学をはじめとする様々な分野で質的研究に欠かせない調査手法として注目され、近年でも多くの入門書や参考書が次々に刊行されています。ところが、いざフィールドワークを学ぼうとすると、体系的に身につけることが難しい研究手法であることに気づかされます。それは、生身の人間との偶然の出会いや予期せぬ出来事を伴うフィールドワークが、なかなかマニュアル化できない不確実な実践だからです。
フィールドワーカーは、現場で生じる困難な状況や複雑な人間関係のなかで様々な不安を抱えつつ、その場その場で知恵を働かせ、何とか調査をやっていく術を多かれ少なかれ身につけています。しかし、そのような葛藤と創意工夫を、個々のフィールドワーカーの記憶の中にとどめておくだけではもったいない!
普段は見聞きすることのできないフィールドワーカーの悩みと知恵を互いに共有することは、これからフィールドワークに取り組む人にとって有益な情報になるだけではなく、調査対象や専門分野によって異なるフィールドワーカーの実践と感情についてあらためて考える機会にもなるでしょう。
そこで、第 5 回目となる今回の部局間交流シンポジウムでは、フィールドワーカーがそれぞれの現場でいかなる困難に直面し、いかに悩み葛藤し、どのように乗り越えてきたのかを、具体的な経験とともに紹介します。第Ⅰ部(研究発表)と第Ⅱ部(リレートーク)を合わせて計 8 名の登壇者にフィールドワーカーとしての葛藤と知恵を語ってもらうことで、フィールドワークの条件と可能性について議論するとともに、専門分野の垣根を越えた相互触発の契機を生み出したいと考えます。
これからフィールドワークをする方も、すでにフィールドワークを経験した方も、フィールドワークに興味を持っている方も、ぜひご来場ください。